高橋昌一郎と左巻健男

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20160914
 先ごろツイッターで、高橋昌一郎が『理科の探検』とかいう季刊雑誌に書いた文章を引いて私をバカにしたものが出ていて、その『理科の探検』のアカウントらしいものがそれをRTして「小谷野敦氏のレベル」とだけ書いた。
 調べると、この『理科の探検』(rika tan)というのは、法政大教授の左巻健男という人が編集長である。図書館では新刊だからまだ中央から回ってこないし、駅前の本屋にもない。そこでSAMA企画という方南町にある事務所らしいところへ電話をしたら、息子の左巻光晴という人が出た。だが、ツイッターアカウントのことは知らないと言う。この息子は41歳だというが、何をしている人なのかと不思議に思ったが、夜になれば左巻が帰ってくるのかと訊いたら、それはないと言う。そこで法政大のほうを調べると、学部から「教科教育センター」というところへ異動になったとあるから、そこへ電話しようとしたが、部局一覧を見ても見つからない。そこで大代表へかけて回してもらったら、「左巻教授はここにはいない」と言うから、それはおかしいと言うと、そのうち人が変わって、「確かにここの所属だが今は小金井のほうにいる」とおかしなことを言う。
 そのあとまた法政大の女の人から電話があって、左巻の電話は教えられないが伝言をすると言う。実際には、アカウントが言っているのはどういうことか、また高橋が書いたものを読んで必要なら反論を書きたいと伝えた。調べると、さっきのツイートはなぜか削除されていたから、スクショをとっておいた。ほかに左巻本人のアカウントもあったが、これは鍵がかかっていた。
 そのうち、さっきの息子らしい人から電話があって、父が話したいと言っているから携帯電話の番号を教えると言って教えたのだが、これが何度かけても話し中である。
 以後音沙汰がなく、私はもうこれは面倒だからいいか、と思っていたのだが、月曜になって「リカタン」のアカウントから、DMしてくれと言ってきた。なんでDMなんだと思い、電話で話したいと言ったら、夕方になってかかってきた。高橋の記事はここにあがった(なお私は文藝評論家ではなく、比較文学者・作家と名のっている。また『あの日』に「大いに感動」などはしていない)
http://d.hatena.ne.jp/samakita/20170306/p1
 私のほうで訊いたわけではないのだが、左巻は、高橋の意見に賛成だという。そこで、『あの日』は読んだのかと訊いたら、読んでいないと言う。それでは話にならない。そのあとはもう言い争いである。『あの日』を読んだら、複数で研究していたのが、若山照彦が途中で逃げ出してマスコミに情報をリークしていたことは明らかで、普通若山が何も言わないのは都合が悪いからだと思うだろう(左巻は読んでないんだからしょうがないが)。
 左巻はひたすら小保方氏の人格攻撃に終始し、「大学院生の頃から不正をやっているようじゃしょうがない」と言うから、「教授になったらしてもいいんですか」と訊いたら口を濁していたから、どうやらいいと思っているらしい。
 若山については、「じゃあなんで山梨大学の教授をやってられるのか」などと言うが、大学教授がこの程度のことで解雇されたりするはずがないのである。なお若山照彦は「厳重注意」を受けている。「山梨大、若山教授に厳重注意 STAP問題(2015/3/7) 山梨大は6日、STAP細胞論文の共著者だった若山照彦教授を「今回の事態を招いた責任は重大」などとして厳重注意するとともに、兼任する発生工学研究センター長の職務を2月10日から3カ月間停止」。いったいこの連中は若山と何かつながりでもあるのだろうか。『STAP細胞に群がった悪いヤツら』を書いた小畑峰太郎も、『あの日』が出たあと『新潮45』で小保方を罵倒していたが、著書のほうは、なぜか若山への追及だけ甘かった。
 あとは高橋と同じく、若山も笹井も小保方に騙されたんだ、と言うのだが、優れた学者がなんで30そこそこの学者に騙されるのか。高橋は小保方を魔女のように言っているが、それこそオカルトではないか。
 『あの日』を読めば、『ネイチャー』などの雑誌に論文を受理されるために、けっこう危ない状態で論文を提出していることが分かる。つまり先を越されないための競争があって、小保方もその流儀に巻き込まれたということだろう。「マスコミを利用した」とか言う人もいるが、記者会見はしばしばやっており、それを「若い女性学者」ということで大々的にとりあげたのはマスコミのほうである。
 私は、小保方がすべて悪いという当初流布された筋書きの矛盾点を突いた佐藤貴彦の本を読んでくれ、と高橋に言ったのだが、高橋は読んだのか読んでないのか、ツイッターでも私の問いかけを無視し続け、どういうわけかアマゾンのレビューが出ると急に反応したのは不思議である。
 ところで高橋は、ゲーデル不完全性定理などを用いて、『理性の限界』などという本を書いている。ゲーデルというのは、80年前後に、ホフスタッターの本のせいもあって、「現代思想」の連中が騒ぎ、大岡昇平などは家庭教師を雇って数学の勉強をしたというが、今では、単なる数学の問題に過ぎず、文学はもとより人文学に関係したり、人間の理性の限界を示したりしたものではないということになっている。高橋の学問がまともな学問かどうかも疑わしいのである。なお左巻に、高橋の本について訊いたら「読んでない」と言ったが、主著も読まずに原稿依頼したわけか。ところで高橋も左巻も博士号を持っていないのだから笑止である。
 高橋昌一郎というのは、若い女学者を集めて「情報文化研究会」とかいうのをやっているらしく、私の後輩のKさんも参加していたがセクハラに近いことがあったかして「あの人自身が理性の限界なんだから」と言っていた。
 誘いこむ手口はこうである。國學院で非常勤を公募し、面接に来た中から(たぶん)気に入った女子に電話して(高橋が面接担当だったから)「研究会に来ませんか」と誘う。知り合っておけば就職の世話もしてもらえると思った院生など若い女子学者が集まるという仕組みである。アマゾンレビューについては、高橋は、知人から「小谷野は無礼」というメールが来て、その人が五点レビューを書くなどと言っていたし、その時脇で私の悪口を言っていたアカウントは、東大大学院倫理学をへてどこかよその大学で博士号をとった女で、やはりそういう高橋の取り巻きの一人らしかった。
 つまりは自分もそういう子飼いの女子にはめられるのではないかという不安が、高橋をして過剰な小保方攻撃に走らせるのであろう。
 (小谷野敦)