中村真一郎の『文章読本』

 昨日だか、私の『文章読本X』に触れて、中村真一郎の『文章読本』が良かった、と書いている人がいた。私はこれは未読だったし、そこで紹介されている内容にはさして感心しなかったが、図書館から借りてきた。
 ところが「ですます」体である。さらに、論文と恋文は違う、恋文は非論理的だとあって、若いころさる女性から手紙をもらったが、春がきたというようなことしか書いてなく、なんだと思って放っておいたら、ずっとあとになって、あれは恋文だったのだと言われてびっくりした、とある。まあそれもいい。中村が高校生のころ書いていた日記を読み返したら、そこには恋愛のことが書いてあるのだが、主観的なことばかり書いてあって、「後年の私は、いくら考えてみても、その恋愛らしいものの実体、つまりは相手の女性の顔も名前も、記憶から浮んでこなくて、大いに失望したのでした。お蔭で、私は人生のごく早い時期に、誰だか判らない女性を恋し、そしてその結果がどうなったのか、その経験は永遠に失われてしまった、という悲劇的な目に遭ってしまったのです」。
 作家は記憶力がいいと言うが、この人は記憶障害なのであろうか。
 さらに、ジョイスの『ユリシーズ』に触れて、当初は難解な書物で、暗号文と間違われたりしたが、「しかしそんな『ユリシーズ』も、今ではかなり判りいい、そして現代人の心をよく表現している、従って面白い小説だと云うことになりました」とある。そ、そうなのか?
 どうもこの本とは相性が悪いようだ。

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http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20161130/p3
トラバされて気づいたのだが、
「一族みな東大、祖父も東大教授で昭和天皇に御進講をした生物学者だったという」
 とあるが、
http://ameblo.jp/derbaumkuchen/entry-11931421850.html
 どうもデマらしいので私のも直しておく。