明治書院の『昭和文学年表』全七巻はすばらしいもので、昭和期の文藝の総覧になっている。文藝誌はもちろん、新聞からも拾ってあって、『婦人公論』など漏れもあるが、日本近代文学に関心のある人は座右に置くべきものだ。 
 ところが、刊行当時、売れないのを懸念したのか、妙な細工がしてあり、帯に「昭和十年代生まれの人 あなたが生まれた時に文学は」などとあり、高校生が漢文の勉強に使う穴あき栞みたいのが附録についていて、「自分史作成のシオリ・ガイド」として、この栞で、あなたの想い出の年月に栞を当ててマーカーで色をつけてみましょうなどと書いてある。まあそんな酔狂な目的でこんなレファレンス本を買う人など一人もいなかっただろう。