謎の女性の正体

 『佐藤春夫読本』(勉誠出版)に、島田謹二佐藤春夫を訪ねた時の写真が載っている。当時、島田は東大比較文学の弟子を連れてよく佐藤邸に行っていたというが、


 写っているのは、真ん中が佐藤と島田、右手に佐藤春夫研究家の牛山百合子さん、あと芳賀徹平川祐弘、左手前は井村君江先生である。キャプションにあるのはこれだけで、後ろにいる男女二人が分からない。そこで芳賀先生に訊いてみたら、男のほうは倉智恒夫・千葉大学名誉教授で、『肉体と死と悪魔』を翻訳した人であった。ちょうど訳したころ講演を聴いたのだが分からなかった。だが女性のほうは芳賀先生も分からないという。そこで加藤百合さんを通じて、井村先生の助手の久保田健史さんから井村先生に聞いていただいたら、馬淵ニナ敦子という人だと分かった。馬渕さんは1963年に、サンパウロ大学卒業後東大比較へ、何かとして来ていた。
http://www.todai-hikaku.org/records/1965/03/919653.html
 これで見ると64年3-4月にポルトガル語の集中演習をしているし、64年5月に佐藤は急逝するので、64年3月か4月ころの写真だろう。