里見とんが「小説の小さん」と呼ばれたのは、志賀直哉が、悪口として、「小説家の小せん」になると言ったのが訛伝したのではないかと『里見とん伝』に書き、宇野浩二が1956年に「志賀直哉が「小説の小さん」」と書いたのをあげておいたが、『本の雑誌』三月号で北村薫さんが、1955年に出た里見の短編集『恋ごころ』の帯に「志賀から小説の小さんと呼ばれ」とあるのを、佐藤春夫が書いているのを発見してあげている。
 それで『恋ごころ』の帯つき古書を入手したら、この帯には裏があり、そこでは「朝日新聞」55年5月9日の「著者を描く」からの引用があり、そこで「志賀から小説の小さんと呼ばれた」とあった。