最近は、作家・文筆家の生計が話題になることも多く、研究書や論文もいくつか出ているが、児童文学作家のほうはよく分からない。
 『日本児童文学』1992年11月号が「児童文学の『経済学』」を特集しており、何点かはこの点に触れた原稿が載っている。
 もうそれから23年もたっているから状況は変わっているだろうが、私の感触では、児童文学は絵本などで百刷を越えるようなロングセラーがあり、那須正幹のような「売れる通俗児童文学」もある一方で、これでよく出してもらえるなというような、知られていない作家がいたりする。
 偕成社ポプラ社あかね書房岩崎書店金の星社など児童書専門に近い出版社もあり、新書判のラノベ風、ないしヤングアダルトものも多いが、ここでも純文学的児童文学はもちろん売れてはいない。かつては児童文学純文学はおおむね左翼文学で、これは日教組が読書感想文指定図書として売るという伝家の宝刀を握っていたが今はそれもあまり効かず、一般作家の女性作家が児童書へ参入して人気があったりする。物語性の復権を唱えた山中恒今江祥智、斎藤惇男、ないし灰谷健次郎らは、故人か過去の人になりつつある。彼らは物語性といってもリアリズムが基調で、ガンバのように鼠が主人公でも魔法とかは出てこなかった。今は魔法ものとか龍と剣ものが隆盛のようである。