臼井吉見と平野謙

 私が高校生の時に使っていて今でも座右に置いている京都書院の『現代国語総覧』の文学史年表は、最後のところが変である。1974年のところで、丸谷才一の「横しぐれ」の次に「『安曇野』対談」という、臼井吉見平野謙の対談があり、75年は林京子の『祭りの場』の次に平野謙の『さまざまな青春』がある。つまり平野謙シフトで、編集委員のうち猪野謙二が平野好きだったのだろう、文学用語事典のところの「私小説」では、私小説の最初を大正二年の近松秋江『疑惑」と木村荘太「牽引」としている。