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志賀直哉である。長い。私は志賀直哉が何しろ嫌いなので、松岡の言うことの半分は分かるのだが、それは志賀が謎なんじゃなくて、志賀崇拝者が謎なのである。私は志賀直哉が好きだと言う人に、煙草を吸わせて貰いながらとっくりとどこがいいのか訊きたいと思っている。
 それに最近は別の問題も出てきた。志賀を褒める人が、志賀は文章を作っていない、感じたまま書いているとか、こしらえていないとか言うのだが、じゃあ俺と同じじゃないかと思ってしまうという問題である。
 さてしかし松岡の文はやはり間違いがあって、妻の勘解由小路康子をなぜか「かでゆこうじ」としているが「かでのこうじ」である。『暗夜行路』の最初は「時任謙作」ではなく「時任信行」で、志賀全集には一冊分、「暗夜行路」第一を三回くらい書き直したものが入っている。
 「万暦赤絵」が教科書に載ったというのも間違い。これは一度も教科書には載っていない。「歴史小説をほとんど書かなかった」というが、「赤西蠣太」に触れないのはなぜか。
 あと、阿川弘之の『志賀直哉』を「驚くほど詳しい」としているが、そうか? それにどういうわけか、初期の里見とんとの交遊に触れていないのは変である。