一人芝居

 『このミステリーがひどい!』に出てくる中学時代の同級生で「マゴベエ探偵団」の録音を渡してきた男とは、教育実習で一緒になった。彼はどこの大学だったか、國學院とかそんな感じで、国語の教師だった。彼は大学で演劇活動をしていて、それは中学時代からは想像できないことだったのだが、北村想がいい、と言っていた。私と彼は女子だけのその中学の演劇部へ出入りして、彼は熱心に指導していた。そして彼は、最後はみなに一人芝居をやってもらいます、と言った。
 しかし、中学生にいきなり一週間くらいで一人芝居をやれというのは無理な話でそれはなしになったのだが、彼がそう言うのを聞いた私は、その晩、突然一人芝居のシナリオを思いついたのである。えっ、できたよ、これ、俺ってすごいんじゃないか、などと思ったのだが、結局やらなかったわけで、書くこともなかったのだが、あとで考えたら井上ひさしの「化粧」の真似みたいなものだった。