いったいいつから、殺人犯が手記を刊行してはいけないということになったのだろう。では永山則夫は、佐川一政は、木嶋佳苗は、永田洋子は。いやほかにも手記はたくさんある。
 つまり少年法によって、二人殺しながら死刑にならなかったのが許せんと言うなら、それは少年法の改正を訴えればいいだけのことで、少年Aがいくら懇願したって死刑にはしてくれないのである。
 永山は印税を遺族に支払ったからいい、と言うなら、遺族に支払え、と言えばいい。木嶋はまだ判決は確定していないが、それが本質的な問題かどうかは分からない。
 永山が文藝家協会から入会を拒否されたことに抗議して退会した柄谷行人中上健次筒井康隆井口時男のうち、三人はまだ生きているが、こういう人たちもネット上リンチの対象にしたらどうか。
見沢知廉なんか、右翼の抗争で一人殺して服役し、刑務所での処遇に不満を述べた著作を出して三島賞候補にまでなったのである。これを持ち上げていた左翼がいたがバカじゃないかと思った。最後は鬱病で自殺したが、殺人者にふさわしい最期であった。
 こういう、ほかの例を踏まえない愚論が多すぎる。
なお、少年Aは匿名だからではないかという論があったが、少年法61条によって名を出すのは禁じられている。「第六十一条  家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」
 当人の同意があればいいという付則も判例もない。