『ハイジ』続編の驚くべき話

 京大の川島隆さんからヴィスメール『ハイジ神話』を送っていただいた。シュピーリの『ハイジ』をやや批判的に論じたもので、ドイツ語訳から川島さんが訳したものである。
 驚いたのは、『ハイジ』には、シャルル・トリッテンの『それからのハイジ』『ハイジの子どもたち』という続編があるのだが、これについて。トリッテンはもともと『ハイジ』の仏訳者だが、その後、何やらシュピーリ自身が書いたかのように(ただし「訳者による」としてある)続編を書き、その中ではシュピーリの別の作品から無断流用していて、さらにこれを英訳した謎の人物があって、『ハイジの子どもたち』は、はじめのほうだけトリッテンの『ハイジと子どもたち』からとったもので、その後は誰とも知れない英訳者の創作だという事実である。
 『ハイジの子どもたち』は、1959年に村岡花子が訳しており、これは現在入手やや難、そのあと各務三郎が二点を訳して、今も読まれている。