書き続けること

 私は尾崎翠批判派なのだが、尾崎が長生きして、死ぬ時に「このまま死ぬなら無残なものだねえ」と言ったという、それはつまり若いうちに文壇から退いてしまったことを示しているのだとしたら、なんで書き続けなかったのかと。尾崎にはもう書くことがなかったのではないか。
 龍胆寺雄とか耕治人とか辛酸をなめた作家が、偉いのは書き続けたことである。耕はまあ文藝誌に載っていたのだが、載せてもらえなくなっても書く。秦恒平など、自費出版で出し続けていて、今度長編にとりくむという。それがいいのである。
 中央文壇から遠ざけられた、じゃあもう書かない、などというのは覚悟が足りないのである。