http://d.hatena.ne.jp/sekiya_itiro/20121127
 東京学芸大教授(今年で辞めるらしい)関谷一郎氏のブログだが、誤字が多い。
「苦界浄土」→「苦海浄土
ほかにも「女史」とあるべきところが「女子」だったり、「高橋源一郎」が「高橋源太郎」になったり(これは誤字ではなくそう思い込んでいるのか)などなどがある。コメント欄がないのでトラバしておく。
http://d.hatena.ne.jp/sekiya_itiro/20121025
 こちらは誤字でも誤認でもなくて、
「『新思潮』や『三田文學』は志賀直哉達の『白樺』と共に反自然主義の側であり、『早稲田文學』は自然主義を支えた文芸雑誌である。
讀賣新聞』も自然主義、『朝日新聞』は漱石が専属の作家になったことでも分かるように反自然主義の立場である。
ついでに言えば、芥川が拠った『毎日新聞』も反の側である。」
 そんなばかばかしく単純な話は成り立たないので、だいたい志賀直哉反自然主義とか、高校生レベルの認識。いわんや新聞がいちいちそんな旗幟など明らかにしてはいない。
 ところで関谷が金井景子に遭遇して、いまや完全に破綻したテクスト論者であるらしい金井に、「作家の存在は否定できないでしょう」と言うと、金井が「私、作家が書いているところを見たことがないから」とおバカな答えを返して関谷があきれる場面がある。
 私はこれを読んで、じゃあ私は作家だから、書いているところを見せてあげましょう、と金井に言い、まあ学会でも行ってノートパソコンで書き始めると、金井が「いや、ダメ、あたしは見ないわ!」と言って逃げ出すところを想像して笑ってしまった。

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川西政明が『川端康成随筆集』を岩波文庫で編纂していたのを忘れていたので図書館で借りた。いやがらせのようだよなあ。だいたい川西が川端について書いたのなんか見たことない。解説は私の川端伝でも参照したのか小笠原義人のことも書いてあるが、もちろん私の名前なんか出てきやしない。
 川端の祖父三八郎は、最初の妻との間に恒太郎を儲けるが、妻が死んだためその妹を後妻にして、康成の父・栄吉を儲ける。恒太郎はしかし、成長して黒田ゲンに入り婿してしまう。長男なのになぜ? というのがかねて問題だったのだが、川西はここをあっさりと、今の母の子である栄吉に譲ったのだ、と解釈している。ところが、栄吉はそのあと、宮本家へ養子に入っており、川端家では一時期継嗣不在になってしまうのだ。だが恒太郎は若くして死に、栄吉は川端家へ戻って兄の妻だったゲンと結婚し、康成を儲けるのである。その理由まで説明しないとダメなんだよ川西。付け焼刃ははげやすい。
小谷野敦