『日本の有名一族』155pの江藤淳系図にとんでもない間違いがあった。義母・日能千恵子が1940年生となっているがこれは妹・初子の生年で、弟・輝夫が1944年生。マリオ・メルカンテと結婚したのも初子。関係者にお詫び申し上げ訂正する。

                                                                              • -

伝記好きが嵩じて変なものを続けて読んだ。梅本育子が、晩年の吉田絃二郎を小説として描いた『時雨のあと』が一つ。吉田絃二郎は、大正から昭和にかけて、感傷的な随筆類で、若者にかなり人気があった作家だが、今では忘れられている。うちの父親も一冊持っていたから、昭和三十年代、つまり生きていたころはまだ人気があったらしい。その吉田が、戦前に妻を亡くし、女中と愛人関係になって、最後はその女中を養女にした、その経緯を女中の視点から描いている。梅本は丹羽文雄の『文学者』にこれを連載したのだが、梅本と吉田との関係は良く分からない。
 あとは櫻井増雄の『地上の糧 前田河広一郎伝』で、大部の書物だが、著者は前田河の弟子で、前田河は徳冨蘆花の弟子だから、高いテンションで書き殴りのように、文章もかなり破調で、最後は前田河から来た手紙類が複写されてそのまま載っている。かなりの奇書だが、有益な情報も得られたし、文壇を前田河の側から見るとこう見えるという趣きもある。もっとも戦時中のところはあまり書かずにおいたようだ。