中戸川吉二作品集

中戸川吉二作品集

 オウム真理教事件の時、『SPA!』が宅八郎によるオウム記事を載せ、小林よしのりが怒って『SPA!』を去るにいたるのだが、その過程で宅が、小林の一派と見られていた切通理作の住所を掲載して、ここへ攻撃をせよと言い、見た弁護士が、これはひどいと言い、宅は、公表されているものだと反論した。
 ツルシ編集長はこれの責任をとる形で辞職したのだが、私はこの一件がずっと気になっている。「公表されている」という点である。
 確かに、しかるべき名簿類を見れば、文筆家、有名人の住所や電話番号が分かる。学者であっても、学会の名簿を持っていれば分かるし、少し前なら『人事興信録』や『日本紳士録』で分かる。むろん、一切公表していない人もいる。俵万智宮崎哲弥である。
 で、これらを、公表されているからといって、次々とネット上に書き込んでいったらどうなるか。今のところ、そういうことをした人はいないらしい。やったら問題になると思っているからだろう。だが、匿名ブログなどたくさんある現状で、名簿類に公表されている住所を記した時、どういう法的根拠によってそれをやめさせられるか、といえば、私には思い当たらないのである。
 おそらく現在のところ、こういうことが起きていないのは、匿名でものを言う連中がバカで、どこを見れば住所などが載っているか知らない、知っているほどの人は常識があるので載せないという危うい均衡が成り立っているからにすぎないのである。