某20世紀の遺物的護憲学者らしい鈴木正の『九条と一条―平和主義と普遍的妥協の精神』をぱらぱら見たら、まったくの雑文集でよくこんなの本にしたなと思ったが、この人、憲法九条を「国体護持」のように「九条護持」と言っていて、そのくせ、天皇制はすぐ廃止せよとはいえないと言う。最近こういうのが増えているのだよな。しかも2009年の本だというのに、ガンジーの非暴力主義を信奉するとか言っていて、ガンディーがカースト制度を温存しようとしたとして批判されていることもこの時点でろくに知らないみたいだが、それともこの人は根っから身分制が好きなんだろうか。

小谷野敦)