博士号をとっていなければ博士課程修了ではない

 大庭健(たけし、1946- )という倫理学者がいる。専修大学教授である。著書も多い。この人は著書などで「東京大学大学院博士課程修了」と書いている。しかし博士号はとっていない。つまり「博士課程単位取得満期退学」なのである。確かに昔は、人文系で博士号をとる人が少なかったから、「単位取得満期退学」を「修了」と称した。しかし今では、それは普通はないことである。

http://www.senshu-u.ac.jp/School/philosophy/ohba.html
 ここでも「修了」とある。
http://reach.acc.senshu-u.ac.jp/Nornir/search.do?type=v01&uid=1203128 
 しかしこちらでは「単位取得満期退学」となっている。むろんこちらが正しい。
 私は一か月ほど前に、専修大学に、これが違っているのはなぜか、おたくの大学では「単位取得満期退学」を「修了」とするのをどう考えているのか、というメールを出した。しかし返事は未だにない。
 もし「うちの大学では単位取得満期退学を修了と称するのを認めている」というのであれば、そう返事すればよろしい。黙ってやり過ごそうとする姿勢が許せないのである。また倫理学者大庭においては、「人から虚偽だと受けとられる恐れのある情報を発さない」という倫理はないのかねえ、と思わざるを得ない。

小谷野敦)