滝口順平といえばランカー

 滝口順平が死んだのだが、滝口といえばランカーである。プリンプリン物語である。原作『ラーマーヤナ』のランカである。「プリンセスと結婚してプリンスになるのだ」と言っていたランカーは、48人くらい兄弟がいる貧しい家の生まれで一代で富豪となったのである。
 自称美人秘書のヘドロは、大卒が自慢である。密かにランカーを慕っているのにランカーは、プリンスになるため、と言いつつ本気でプリンプリンが好きらしいので嫉妬しているのである。当時「ロリコン」という言葉は普及していなかったが、今なら間違いなく「ロリコン」呼ばわりされるランカーである。ヘドロのせりふ「あんなしょんべん臭い小娘を、奥さんにしちゃおうだなんて、正気の沙汰とは思われませんわよ」。「奥さん」というのが子供番組らしい。
 ためにヘドロは、南の島オサラムームーで、プリンプリンが乗るはずのヘリコプターに爆弾をしかける。オサゲの恋人で、都会へ行って歌手になるのが夢のピコピコがそのヘリコプターに乗って島からの脱出を図り、爆発して死んでしまう。「ピコピコー!」悲痛な叫びをあげつつ海岸へ走るオサゲである。プリンプリン暗殺を謀ったためヘドロはランカーから電気椅子に座らされる。しかし涙ながらに、ランカーの苦闘時代をともにしたことを語るヘドロの姿に、ランカーは処刑をとりやめる。本当はいいやつなのである。
 どう見たって、プリンプリンの友達三人組のうち、プリンの恋人らしいのは、ボンボンであったが、ランカーがボンボン暗殺を企てるという筋はなかった。それはあくまで、ボンボンを「友達」と位置づけているからであろう。
 もっとも「ああ〜純情一路〜どこまでも、ああ〜プリーンセース、プリンプリーン」と歌うランカーは、前番組で、悪の巨魁赤柿玄番が、笛吹童子のお母さんに横恋慕して「君がいなけりゃブルーブルーブルー」と歌っていたのをとった感じであった。もっとこれは、脇で嫉妬する秘書がいなかった分あまり面白くはなかったが、『ガラスの仮面』でいえば「真澄さま…」と頬に汗を流す秘書の、あれは戸川京子だったが美人なのに死んでしまった。
 ランカーは演歌も歌った。プリンプリンの故郷がピテカンドロップオシモサクではないかという情報を得て、「ピテカンドロップオシモサク、雨の降る日も風の夜も、泣いてくれるなプリンセス、ピテカンドロップオシモサク」と歌っていたんだが、この曲は何だっけ。
 『プリンプリン』の曲はみな名曲なのだが、それもそのはず、作曲はあの大河ドラマ『秀吉』のすばらしい主題曲を作った小六禮次郎倍賞千恵子の旦那である。『遥かなる山の呼び声』で高倉健に惚れこんで、高倉健は何も言ってないのに勝手に相思相愛だと思い込む倍賞千恵子は、自分が美人だと信じている。
 ボンボンは神谷明だが、あのでかい頭のルチ将軍も神谷明である。「知能指数は1300」のルチ将軍である。ある時ボンボンとルチ将軍がわあわあ言い合っていたら、はせさん治のオサゲが割って入り、「ちょっとちょっと、あんたたちが言い合ってるとややこしくてしょうがない」と楽屋落ちをやっていた。神谷さんお疲れ様でした。もっとも『真田十勇士』一年目は、松山省二が一人で猿飛佐助も真田幸村柳生但馬守もやっていたから、佐助と幸村が話していると一人芝居だった。