あまりにも遅い博士論文

 鈴木淳子さんの『ヴァーグナー反ユダヤ主義』(アルテスパブリッシング)が出ていたので驚いた。
 この人は比較の後輩なのだが、面識はない。三つ下なので、どこかで会っているのを知らないだけかもしれないが、ほかの同学年の人は知っているのにこの人だけ知らない。当時は山本淳子さんといった。66年生まれで90年に院に入っているから高齢だったわけではない。
 山本さんが博士号をとったのも、私がとった翌年の1997年だ。東大の博士論文といえど、本にならない例はある。とうていどこの出版社も引き受けてくれないのであきらめることもある。しかし、それから14年たって出たのだから驚いたのである。その間に、名前も鈴木淳子と変わっていた。山本淳子も鈴木淳子も、同名異人の多そうな名前で、山本淳子といったら『源氏物語』の研究者が有名だ。
 艱難辛苦の末にやっと出たといえばよいけれど、その間研究はどうなっていたのやらである。

ヴァーグナーと反ユダヤ主義 「未来の芸術作品」と19世紀後半のドイツ精神 (叢書ビブリオムジカ)

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