地震の三次災害

 二次災害が放射能騒ぎだとすると、三次災害が、「反原発活動に熱心になっている知人に悩まされること」であろう。
 香山リカは、反原発に熱心になっていて周囲から疎外されて孤立する女が多いと書いていたが、実際そういう女は多い気がする。
 私の場合、一人目は、フェイスブックで20年ぶりくらいに遭遇した女性であったが、地震のあと、いきなり、ベンジャミン・フルフォードの画像を張り付けて、地震兵器によるとか陰謀だとか言い出した。私も最初は、それはトンデモでしょう、と言ったのだが、ええ、そう見えますが、この画像を見てください、と別のトンデモ画像を張り付けるので、ついに耐えられず、切った。
 もう一人は、東大で博士号をとって、まだ定職のない人で、何やら知り合いから得た情報では、と言って、貼りつけたりURLを貼ったりして、原発情報を送ってくるのだが、そんなものは雑誌でもネット上でも溢れかえっているのに、あたかもそれは自分らだけが入手した極秘情報であるかのように言うのである。
 当初は放置していたのだが、あまりに続くから、じゃあ電力は足りるのか、経済への影響はどうなのか、ドイツはフランスとかから輸入しているのではないか、などと問うと、ええそうですね、反原発も感情的ではいけません、せめてα波とβ波の違いくらい知ってやらないと、などと言う。経済については、金権主義が問題だとか言うから、あなたはじゃあ社会主義なのかと訊いたら、これは答えなかったが、左翼だとは言っていて、しまいには、ドイツは輸入する以上に輸出している、というグリーンピースの報告を持ち出す。で、それは従来原発があったからできたので、これからは輸入が増えるんじゃないかと言い、風力発電は日本では無理だという話をすると、ついに、火力でいいのだ、地球温暖化なんてのは大ウソだと言い出すから、(では京都議定書を破棄しなきゃなりませんね)と言いたいところ。
 その上、自分はターシャ・テューダーみたいなおばあさんになりたいから、土が放射能で汚染されるのは困るとか、その他むやみと「父の知り合い」が登場するのである。私はもう喧嘩覚悟で、それならブログとかを作ってそこで意見を発表すればいいでしょう、それとも保身のためにやらないんですかと訊いたら、ブログとかは相談したけれど効果があるかどうか、保身ってどういう意味か分からない、と言うので、そりゃこれから就職に差し支えるとかいうことです、と言うと、そんなことは考えていないけれど、だから保身だと言うのはおかしい、とか言うのだが、私はただひたすら、原発関係のメールを送ってほしくないから言っているのに、全然理解しないのである。で、ついに、原発に関するメールは送らないでくれ、それはチェーンメールと同じで迷惑メールだから、と言った。
 この二人の言い方には共通点があって、疑問を述べると、「ええ、その通りです、がしかし」と来ることで、これはどうもある種の宗教の布教で「みなさんはじめは疑問に思うんです」と言うのと同質か。あとこの二人は、ともに定職がないが、夫や父の金で、さほどせっせと働かなくても済むことである。それと、ブログなどをやらない理由について、「効果があるかどうか」というのは、私には遁辞としか思えない。人は逃げる時、「必要がない」とかいうことを言うものである。