「週刊現代」のインチキ取材

 6日のことだが、『週刊現代』の高堀という記者から電話があった。震災後、私がストレスからお菓子類を食べ過ぎて太ってしまい、それをやめて散歩も始めたというブログ記事http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110610 を見ての電話だという(もっとも後で、妻が見たなどと曖昧なことを言い始めた)。
 そして、米国の研究者によると、現在盛んに使われている糖分ゼロというふれこみの「アセスルファム」は、食欲を増進させる機能があるのでかえって危険だと言い、感想を求めてきたから、私も、糖分ゼロという缶コーヒー「ゼロマックス」を飲んでいるが、そりゃ食べ過ぎれば太るわけで、ダイエットコークを飲んでいれば痩せるというわけではないのだから、本人の心がけ次第で、しかも水だって飲み過ぎれば太るんだから、そう大した研究じゃなくて、医者の売名行為みたいなもんじゃないか、と言った。
 電話を切ってから、私のコメント部分を送ってきたのだが、何やら要領を得なかったので、後半を書き直した。

比較文学者。下戸の甘党で知られる
 糖分ゼロでも害があるというのではなく、食欲を増進させるというなら、うつ病の薬にもあることで、自分で気を付ければすむことです。飲み過ぎれば水でも太るのですからね。どうもこの手の議論は、医者が売名行為で騒いでいるようにしか思えませんね。

 ところがそれから二日ほどたってまた電話があり、その後取材をした結果、と話すから、なんで取材が終わってからコメントを求めないのかと不思議に思ったが、その上、私に「清涼飲料水を飲んでいるわけですよね」と言う。私は、かつて低カロリーのペプシを飲んだことはあったが今は飲んでいない、飲むのは充実野菜とゼロマックスだけだ、と言ったら、「えっ、そうなんですか」と驚いていた。どうもこいつ、頭が悪いんではないかと思い、話はちっとも要領をえず、コメントも改めて見せられることもなく、なんか変な取材だったなあ、と思っていた。
 すると今日になって掲載誌が届いて、見たら「カロリーゼロでデブになった」という記事。そして私のコメント部分は、ファウラーとかいう米国の医師の、糖分ゼロ甘味料は、空腹感を増してかえって食べる結果太るというコメントのあとに、

 …小谷野敦氏は、このケース。
「震災後、外出気分ではなくなり、糖分ゼロのコーラを飲みながら家で過ごしていたら太ってしまった。飲料のせいではなく、一緒に食べた大量のお菓子のせいだと思う。今はお菓子を控え、夜中に散歩を始めたので、体重は遠からず元に戻るでしょうけどね」

 私が送ったコメントとは全然違うし、私はこんなの見せられていない。しかも、コーラのがぶ飲みなんぞしていない。しかも「このケース」ってそれじゃまるで糖分ゼロの「コーラ」のために食欲が増進してお菓子を食べ過ぎたようで、まったくのインチキである。
 まあ、砂糖会社か何かの紐つき記事だろうが、まったくマスゴミの「コメント」操作は、恐るべきものである。
 (小谷野敦