1955年(昭和30年)の『文藝年鑑』を見る。これには前年雑誌に発表された小説の題目が載っている。雑誌ごとの分類で、二つに分けられており、1)は「綜合・文芸・同人誌」で、『新潮』『群像』『文學界』『文藝』『文藝春秋』『別冊文春』『中央公論』『世界』『改造』『知性』『心』『新日本文学』『文学者』『近代文学』『三田文学』、2)は「大衆・読物・週刊雑誌」で、『小説新潮』『小説公園』『オール読物』『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊読売』『週刊サンケイ』『週刊タイムス』『キング』『ロマンス』『平凡』『明星』『講談倶楽部』『面白倶楽部』『小説倶楽部』『小説と読物』『傑作倶楽部』『小説の泉』『宝石』『読切小説読物』で、実はそのあと(3)があるのだが、これは「婦人雑誌」である。
 2)の『キング』からあとあたりが「大衆小説誌」ということになるのかと思うが、実際は、顔ぶれは、少しずつ大衆作家へ移っていくが、さほど激しく違わない。『宝石』だけは探偵小説誌である。『文藝年鑑』でも、「純・中間・大衆」などという三分割はなされていない。しいて言うなら「純・大衆・婦人」に三分割されているのである。