小森陽一的

 『ユリイカ村上春樹特集で栗原さんが小森陽一の春樹新書をぼろくそに言っていた。ただまあ、春樹というのが、天皇制を否定しなそうな作家だという感じはあるし、文化勲章も喜んでもらうだろうような奴だという気はする。
 しかし今日届いた日文研の、酒井直樹・磯前順一編『「近代の超克」と京都学派』を開いたら、冒頭に酒井の論文があって、谷崎潤一郎について珍妙なことを書いているのだが、これは小森が『<ゆらぎ>の日本文学』で言ったことらしい。何でも、谷崎は昭和初期の「歴史物」としか書いてないのだが、「乱菊物語」とか「吉野葛」とかのことか、そこで天皇制をパロディー化した、とかいうのであるが、そんなことは何ら実証的に証明できない。谷崎に反天皇制の思想などないのであって、小泉浩一郎など、『細雪』は女性原理の勝利であり、天皇制は男性原理だから谷崎は反天皇制だとか言っている。小泉にせよ小森にせよ酒井にせよ、我田引水もいいところだ。
 ところでこの酒井論文はもと英語で、訳したのは高橋原という、東大で博士号をとった宗教学科の助教らしいのだが、何か変な訳で、「エドモンド・フッサール」とあるのは、ユング研究で博士号をとった人としてどうかと思うのだが「サイデン・スティッカー」とあったのには呆れた。馬鹿じゃないかこいつ。
 最後に稲賀さんの論文があったので覗いてみたら、オウム真理教サリン事件の後で、外来の毒蜘蛛がはびこったので殺虫剤をまいたが、これはサリン散布と同じではないか、などと三浦俊彦を引いて書いていたが、頭大丈夫だろうか。(三浦がどこでそういうことを言ったのかは註がついていないので分からない)