「中日新聞」「東京新聞」に渡部直己の「土曜訪問」インタビュー。抜粋。

学生を甘やかすつもりは一切ない。
 「今の若者は自分の甘さに対する恐れがない。難解な文章に出会うと書いた方が悪いと思い、“上から目線”と言って避ける。けれど、“上”がなければどうやって自分自身を向上させるのか」。他方、批判に打たれ弱く、認めてもらいたいという願望ばかりが強い。「これを打ち砕くのが、上から目線の難しい本。この本を読めばそんな文学や思想と出会える。その意味では、より良い人生を送るためのネタ帳なんですよ」。
(中略)
 若者たちが目指す文学界の今をどう見るか。一九八〇年代はニューアカデミズムブーム、九〇年代は『批評空間』誌が一つの軸となって批評を牽引し、文学作品の多様な読みが試みられた。だが、「ゼロ年代は誰でも読める易しい作品がもてはやされ、批評は迎合の時代に陥った」。例えば、人気の村上春樹作品についても「批判的なのは僕と小谷野敦(こやのとん)さんくらいで、他はみんな褒める。気持ち悪くて仕方がない」と首をかしげる

 うーんしかし渡部の姿勢が「学問」と対立するというのはおかしい。あと金井美恵子先生の『一冊の本』の連載が、近ごろサッカーの話ばかりなのは寂しい。このところ、朝日新聞系の雑誌がつまらなくなってきている。

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 中川右介さんから『昭和45年11月25日』をいただく。山田風太郎『同日同刻』の三島由紀夫版で、なぜ誰も今までやらなかったのかと思うくらい。しかしあの事件に特段な意味はなかったと私は思う。帯には日本人があの日から変わった、とあるがこれは惹句。