人間関係プロレタリアート

 大学一年の時に「人間関係プロレタリアート」という言葉を見つけて、これだ! と思った。それこそがまさに、私が求めていた概念であったのだ。もちろん、自分がそうだという意味でである。しかし、サークルの読書会で、「それは××さんが人間関係プロレタリアートじゃないからですよ」と言ったら、いきなり三年生の先輩が「また、そういう言葉を使いたがるう〜」と嫌な顔をしたものだ。しかし使いたがったのではなくて、それこそ必要な概念だと思ったのである。
 「もてない男女」というと、まだ、同性の友達はいるという含みを持ってしまう。同性異性を問わず、貧弱な人間関係しか持てずにいる者を表すために、必須の概念だと思う。それとも何か別の用語があるのか。
カニさんが「非コミュ」と言っているが、それは違和感がある。コミュニケーション能力というのとは必ずしも関係ないから。ファッションセンスが悪いとか、顔が醜いとか、流行りものに疎いとか、音楽の趣味がないとか、野球に興味がないとか、いろいろな素因があるだろう) 

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フランス19世紀の純文学作家が書いた歴史小説ってなぜか面白くない。バルザックの『セラフィタ』、フロベールの『聖アントワーヌの誘惑』、フランスの『神々は渇く』『タイス』とか。デュマとかは面白いんだが。
小谷野敦)