途中で帰った上岡龍太郎

http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20100415/p1
 なんかトラックバックがあったので見てみたが、『探偵!ナイトスクープ』の「心霊事件」は、もし私が観たものだとすると、ここに書かれているのとはちょっと違う。
 これは、部屋に女の幽霊が出る、という医学部学生からの依頼で小枝が出かけたのだが、当然のごとくこの学生は精神を病んでいて、何もいないのに「ほら、女の人の幽霊が出ました」などと言い、小枝はオチをつけるために除霊師を読んでお祓いをした。上岡は、こういう除霊師のようなものを頼むことが、こいつらに市民権を与えることになってしまうのだ、と怒り、これ、ディレクター誰? と激しく怒りつつ、それは三つあるナイトスクープの二つ目のVだったのだが、そこで帰ってしまったのである。
 公開番組だから、その後どうなるのかと思っていたら、誰もいなくなった夜のスタジオという設定で、小枝と北野がポツリと座っていて、そこで三つ目のVを見せるという段取りだった。
 確かにあの時岡部まりは、帰って行く上岡を呆然と見送り、探偵たちが大騒ぎする中で、下を向いて「仕方ないですよね」と呟いた。しかしこの「仕方ない」は、上岡の怒りを理解しての仕方ないである。だいたい幽霊なんて存在しないわけだし、上岡が怒るのは当然である。  
 しかし上岡は、年とって良くなったタレントだなあ。『ガキ帝国』に出た時なんか、まだ39歳で、不良グループのボス役なのだが、軽い軽い、ボスの演技をしているチンピラにしか見えなかった。

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天皇制批判の常識』に対して、人間には不合理なものも必要なのだ、という感想が書いてあった。しかしこれは的外れで、私は天皇の存在をなくせとは言っていない。天皇を法で規定するのをやめたらいいと言っているだけである。しかして、法が不合理なものを規定するというのは、近代法から言えばおかしいのである。もし法が不合理なものを扱う、ということになったら、藁人形に五寸釘を打った者は傷害罪に問われたり、護摩壇で呪いをかけたりしたら逮捕される、ということになってしまう。つまり前近代に戻るわけだ。まあ、そうしろ、呪いなんか掛けた奴は逮捕だ、というなら、まあそれはそれで自由な主張である。
 ところで、論争が起きるとたいていおっちょこちょいな奴が、「あなたの意見には反対だが、あなたがそれを言う権利は命をかけて守る」とかいう言葉を持ち出すのだが、だったら名誉毀損とか侮辱罪とかプライヴァシー侵害とか、すべて不法行為と見なすのはもちろん、刑事上の罪に問うことなんか、絶対やめるべきだよね。そういうことを言う奴って、そこまで考えてないだろう。
 (小谷野敦)