堕ちた偶像

 小林信彦『うらなり』が文庫版になっていたので立ち読みしたが、私が指摘したおかしなところは直っていない。(第二次大戦前の語りなのに「第一次世界大戦」と言う。神戸の中心街から「神戸駅」へ向かう。自身の解説で「四国辺」はもと「中国辺」になっていて、「異国的」なものを意図したのだろうと、どうやら「中国」をシナのことだと思っているらしいところ)。
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20070524
 ふーんそうですか、小林信彦ってそういう人でしたか、という感じである。解説は案の定・坪内祐三

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千代大海とか魁皇とかの崖っぷち大関が、大関在位場所とか幕内勝ち星とかの記録を持っているのが不思議。朝潮・琴風・北天佑若嶋津時代にもそんなことはなかった。それにしても、大関に勝ったらインタビュールームだが、この二人に今勝ってもなあ…感が激しく漂う。若嶋津が引退した場所なんか毎日負けていたから、とうとう勝ち力士インタビューもなくなっていたと記憶する。

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尾道典シナリオ&エッセイ『山手線目赤駅』(仮面社、1979)で、「さらば、大島渚」を読む。あとこれに大島が答えたものへの再反論も載っている。阿部定について調べたのは自分で、大島がアナトール・ドーマンに急かされて違うものにしてしまったとか。しかし大島渚のどこが偉いのかよく分からず『日本の夜と霧』を観てげんなりした私としては、まあ映画界は大変だねえ、としか思わない。『御法度』は浅田彰に酷評されていたし、その大島の著作集を編纂しているのが四方田犬彦で、なぜかアマゾンで四方田を「チビ太」と呼んでいる人がいて、チビ太ってもとは浅田彰だったのに、とか思うだけ。

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三島由紀夫『複雑な彼』を集英社文庫で読む。若き日の安部譲二をモデルに、『女性セブン』に連載されたもので、1966年。三島は通俗小説がうまいのだが、南北アメリカを舞台にしていて、やはりある程度はうまいが、主人公の顔についての描写がないのがおかしい。
 ところで安部譲二は煙草をやめたとかいって、禁煙グッズのCMに出ていたが、実際にはやめていなかったらしく、最近は出なくなった。禁煙ファシズムアラン・ソーカルみたいなものか。