芥川賞直木賞贈呈式

 芥川賞直木賞の贈呈式に行ってきた。他の文学賞は割とほいほい招待状が来るのだが、これだけは今回が初めてで、それはたぶん北村さんが招待者に入れてくれたからで、たぶん今後このような機会があるとは思われないので話の種に。
 えらく来賓が多いのは当然として妙にビジネスマン風の人が多く、出版業界の重役さんかなあと思っていたら、磯崎憲一郎の会社から80人来ているというので驚いた。エリート会社員というのはそんなに多くの人とつきあいがあるのか。
 前方左手には「磯崎家」「北村家」と書かれたテーブルがあって、まるで披露宴のようだ。モブ・ノリオの時は「モブ家」だったのだろうか。だいたい北村さんって本名じゃないし。
 そこで見るとどうやら磯崎父らしき老人がいて、磯崎新ではなかった。しかし65年生まれの長男の父にしては70代後半に見えた。
 選考委員の挨拶は黒井千次北方謙三。黒井は自分も会社員作家だったから、もし五年後、作家をとるか会社をとるかという二者択一に追い込まれたら作家をとってほしい、と言っていた。
 しかしみなこの暑いのに背広姿で、いやー私がどっちかの賞をとるとしたら夏季じゃなくて冬季にしてほしいななどと妄想に耽りつつ、北村さんに挨拶しようとしたらその前に長蛇の列ができていたので、帰途についた。もう二度とこの式に来ることもないだろう。

 (小谷野敦

 しかし北村さんは、やはり最初の女子大生シリーズ、特に『六の宮の姫君』がいいなあ。