ビルドゥングスロマン?

 大学生のころ、児童文学のサークルで『ガンダム』の話をしていて、私が、いやあほかの男を好きになっているミライさんを見守るブライトがいいですねえ、と言ったら、某先輩があははと笑って「ブライトが一番成長してないじゃない」と言ったので、ほお、と思った。
 主人公が作中で「成長」するのを、ドイツではビルドゥングスロマンといい、日本で教養小説などと訳されるがこの訳は変で「成長小説」とでもしたほうがいいだろう。
 しかし「大正教養主義」とかいってバカにされるように、この理念は概して古いとされているのだが、小説であれドラマであれ、作中人物に「成長」を求める人は、一般人はもとより、文学研究者の中にもけっこうな数いる。実にふしぎでならない。たぶん、文学のよく分かっていない高校教師あたりが教えるのだろう。まあしかしその背後には依然としてヘーゲル的、明治的な立身出世主義とか、近代の前へ前へ主義とかいうものがごてごてと存在するのだろう。
 

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駅前の本屋にいたら保坂展人が挨拶に来ていた。ううん、福島瑞穂がいなければ投票するんだけどね。
 『解釈と鑑賞』が鏡花特集だったので立ち読みしたが、1500円出す価値なしと思った。ひどく、閉じた世界である。昔はこの雑誌も作家のエッセイとか載せていたがもうその原稿料も出せなくなったのだろう、対談すらない。これでは一般誌としてやっていけないだろう。
 鏡花に関しては、実証的でコンパクトないい本がない。伝記も二冊くらいあるが、ちょっと中途半端である。