藤原正彦『若き数学者のアメリカ』を流し読みする。「アメリカへ留学して帰ってきた男はナショナリストになる」という定理の、例外かと思われていた藤原だが、20年ほどの時を隔てて、なったもなったり、国語がどうの国家の品格がどうの武士道がどうのとすごいパトリオットになってしまった。やはり傷ついたのだろう。
 この本を読むと、その辺を控えめに書いているなと思う。孤独感、英語がうまく通じないこと、性的飢餓、ノイローゼなども書いてあるが、フロリダ旅行のあたりからだんだん米国になじみ女友達もでき、ストリーキングを実践したりもする。しかしやっぱり、つらかったんだろう。まあその辺はその後の本に書いてあるのかもしれんが。

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室生犀星の生誕120年だそうだ。ところで室生の『わが愛する詩人の伝記』は、『婦人公論』に一年間連載されたのだが、単行本では11人しか取り上げられていない。これは5月号に載せた佐藤惣之助伝が遺族の抗議を受けたからである。むろん私は現物からコピーをとった。