「国際グラフ」からの電話

 電話番号は大阪であった。男は、国際企画の「国際グラフ」という雑誌の者と名乗り、猫猫塾の塾長さんですかと言う。うちの雑誌で紹介したい、と言う。
 「まあこういう、文学の塾というのは珍しいと思いまして」
 「そうですか?」
 検索すると、すぐに「あとで八万いくらの広告料を請求する」というのが出てきた。男は、
 「塾長さんは、あの、文学とかそういうものに、以前から興味がおありだったんですか?」
 と訊く。
 「は? 私のことを、何もご存知ないんですか」
 「ああ、ええ、ご存知・・・知らないんです。名前も分からなくて」
 「小谷野です」
 「くえのさん?」
 「あの、何か様子が変なので、切りますけど」
 「あ、はい、分かりました」

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淀君」は辻君などになぞらえた蔑称説を最初に唱えた小和田哲男先生、昨年10月3日の読売新聞で諸田玲子と対談「戦国の女たち」をして、

 諸田 でも女性に関する確かな史料って少ないですね。小和田先生や福田千鶴先生の歴史学の研究にはずいぶん助けられました。秀吉の側室のうち茶々など数人の女は正妻扱いを受け、外交や財宝管理などいろんな役割を持って協力しあっていたという最新の研究も取り入れさせて頂きました。
 小和田 確かに、研究の進歩で、最近は戦国時代の女性が果たした役割が注目されている。昨年出た福田さんの『淀殿』に触発されて、私も秀吉の妻のお禰と淀殿が力を合わせ豊臣家存続に努力していたことを執筆しているところです。

なんて言ってるが、新著で自説撤回するか。
 しかし小和田という人は今までノーマークだったけれど、とんだ大衆歴史学者だなあ。NHKと結託して大河ドラマ関連本を出すし、知的生き方文庫がやたら多いし。こんな人が思いつきで書いた説と同じことを書いてしまったなんて、田中貴子先生ほぞを噛んでいることであろうて。
http://d.hatena.ne.jp/tonmanaangler/20090325
 田中先生が見落とさないように。

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http://www.eikokuya-net.com/
遂に禁煙ソープランド出現。
そもそも違法の公然売春なのに・・・。ていうか、ソープランドには「受動喫煙」なんかより怖いものがある気がするよ。

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2ちゃんねるを叱る」を書いた七年前に比べると、私はだいぶインターネットに対して期待を抱いている。2ちゃんねるでさえ、あったほうがいいと思っているくらいだ。なぜなら、それだけ日本のマスコミがひどくなったからである。
 北野誠の件でその気持ちを強くした。私は最近の北野のことは知らないが、大阪にいた頃『探偵!ナイトスクープ』を観ていて、なかなかの好漢だなあ、と思っていた。ちょうど梁山泊の頭領の一人、みたいな感じだった。
北野の件は、報道を見ていてさえ、何がそんなに問題なのか分からない。これほど無気味な事件は、ちょっと珍しい。報道が、報道の役割を果たさなくなっているのだ。
 大きな力を持つ団体ほど、2ちゃんねるに書かれると削除される、という事態が、この世には2ちゃんねるより悪辣な者たちがいることを示しているだろう。