この上何が欲しい

 「週刊ポスト」を立ち読みしたら、香山リカ勝間和代の本を書評して、自分の本がベストセラーにならない理由が分かった、と書いていたので、筆者名を見間違えたかと思ったよ。ベストセラー、なってるじゃないか香山。
 大学院も出ていないのに立教大教授になって、本を次々出してベストセラーになって、なお売れたいのか香山。この上、何が欲しい、って木枯し紋次郎だ。斎藤なんとかいうプロレスライターの恋人もいて、この上、何が…。自分の心理を分析してほしいです。もしや、賞が欲しいとか。

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河童のクゥと夏休み」というのがキネマ旬報五位だったので観たら、いやひどいアニメ映画だった。筋書きは既視感あふれるし、『遠い海から来たCoo』から名前までパクっているし、人間の描写なんか恐ろしく凡庸だし、現在の水準ではアニメ的に優れたところなんかないし、ヘタウマでも狙ったのか声優はなげやりだし、こんなものが評価されるのは、例によって「偽善エコロジー」のせいか。オキナワも出てくるしね。何だか70年代に小学校あたりで観せられる文部省選定映画のようだった。この水準でキネマ旬報ベストテンを選ぶなら、「長靴をはいた猫」とか「カリオストロの城」とか、一位とか二位だよ、冗談じゃない。
 それでふと思ったのだが、映画版「銀河鉄道999」って、当時は、「ヤマト」人気にあやかって松本零士原作をアニメ化しただけのように思われていて、今でもアニメ映画史上ではさほど評価は高くないけど、あれ単独でぱっと見たら、そうとう藝術的完成度は高いんじゃないか。むろん、興行成績はその年の邦画トップだし、キネマ旬報でも17位(「カリ城」は57位!)、読者選出では五位だが、いまもっと再評価してもいいんじゃなかろうか。
 (小谷野敦