著者名列挙やめい!

 一般に、多くの人が書いた書物というのは、編者を設けて「五木寛之編」とかするものである。かといって、中央公論社の『日本の文学』を国会図書館OPACで、編集委員会に一度出ただけの谷崎先生の著書のようにしてあるのは困る。
 しかるに最近、主として書下ろし小説のアンソロジーで、作者全員の名前をずらずら並べるのが増えてきた。

「最後の恋」阿川佐和子,角田光代,沢村凛,柴田よしき,谷村志穂,乃南アサ,松尾由美,三浦しをん著 新潮社 2005

 といった具合である。仮にこれを、論文を書く際に論及したとしたら、コピペすればいいといっても、見た目が良くないし、なんだか百姓一揆の唐傘連判状みたいで気持ち悪い。やめてほしいと思う。あと中条省平、変なタイトルをつけるのやめてほしい。いや私だって人のことは言えないのだが、『中条省平は二度死ぬ!』はいいとしても、『名刀中条スパパパパン!』なんて、中味はまともな文藝時評なのに、これじゃ論文の注に書けないだろう・・・。
 (小谷野敦