怒り炸裂

 岩下尚史の『藝者論』が和辻哲郎文化賞を受賞したと知って怒り炸裂である。『遊女の文化史』と大同小異の駄本である。ああ関西ではやはり山折とか梅原とか、こういうのを評価するのかと歎息。和辻賞は、学術部門はいいのだが、一般部門は時々変な本に授賞する。だいたい山折がこの賞をとった『愛欲の精神史』もひどい本だったし、渡辺京二の『逝きし世の面影』も、一部はひどい。渡辺にはその点を批判した論考を送ったが梨の礫。
 ヨコタ村上が、「比較文学に否定的な考えを持っているという理由で日本比較文学会から除名しようと熱心に工作した」などと嘘を書いているので、阪大に文句を言ったが、金崎言語文化研究科長は、これ以上何かするつもりはないだの、過去のことだのと言って取り合わなかった。ヨコタ村上にも何度かメールしたのだが返事はなし。今は米国にいるらしい。(繰り返すが、ヨコタ村上に関して関西支部幹事に手紙を送ったのは、やつが学内セクハラをしたからである)。比較文学会をやめない理由にしたって、学会で出世したいからだ、と正直に書けばいいのに。
 『合コンの社会学』なんて、学生のレポートレベルの本にも、アマゾンで一点をつけておいたら、いつの間にか削除されていた。誰の陰謀だか知らないが、上野千鶴子ゼミ出身の著者としては、私の本に触れるわけには行かなかったのだろうね。やだね。
 読売文学賞の推薦をするようになって五年、ようやく私が推薦した本が授賞した。『犬身』だが、これはまあ、受賞するだろうと思って書いた。それ以外の部門は全滅。大笹さんの本も貰ったのだが、まあ大笹さんはそこそこ賞もとっているから、外した。そこでふと気づいたのだが、選挙でも、共産党社民党の候補に入れても当選しない、ということが続くと、選挙民は無力感を感じて、当選しそうな人に投票して、自分が入れた人が当選したことに意外な喜びを感じて、以後は自民党の候補に投票するようになるとか、そういう社会心理学的研究というのはないだろうか。それともこれこそ、分かりきったことだろうか。
 (小谷野敦