スナドリネコさんと夏目漱石

 うふ。最近はやりの通俗哲学書の題名みたいだ。
 『ぼのぼの』のスナドリネコさんはかっこいいが、要するにヤクザもんのかっこよさだ。そのスナドリネコさんは、ぼのぼのが困っていると、「困るのはかならず終わるんだよ」と言う。私はてっきり、生物は必ず死ぬから、その時に「困るのは終る」という意味だと思っていたら、そうではない、と言う人がいる。確かに中島みゆきも「いつか笑って話せるわ」と歌っている。
 しかし夏目漱石の『道草』の、漱石本人と思しい健三は、「世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない。一遍起こったことはいつまでも続くのさ。ただいろんな形に変わるから、人にも自分にも分からなくなるだけのことさ」と言っている(正確な引用ではない)。
 そりゃ漱石の言うとおりだと思う。何も笑って話せないまま死んでいく人も大勢いるだろうし、死の床でまで困ったままの人も大勢いるだろう。