見知った他人

 今日は初めての人三人に会った。一人は対談の相手だが、誰かは内緒。その場所で、声をかけられたのが、メールのやりとりはしていたある人だが、これも内緒。
 帰りの電車で、ふと目があった人が、知っている顔である。しかし知り合いではない。隣の席が空いていたので座って、作家か、俳優か、と考えたのだが、思い当たらない。中年の小太りの男性である。関川夏央みたいな感じだが、もちろん関川ではない。
 その人が降りていって、あ、と思い出した。NHKでニュースをよく読んでいる末田アナウンサーであった。目が合ったときの表情から、ああ、この人はいつも街中では、「あれっ、この人知ってる」という目で見られているのだろうなあ、と思った。なのに誰だかすぐには分からない。そういう意味では面倒な職業だなあと思った。
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 「作家さん」という言葉の濫用について注意したのは四、五年前だが、もうすっかり定着してしまった。「好きな作家さんは」とか、みな言っている。のみならず、「NHKさんは」とか「電通さんは」みたいな言い方までこれから広まりそうな予感がする。業界での言い方を一般人が踏襲しなくていいのである。
 さるパソコン器具の説明書で、各企業名が書いてあるところに「敬称略」とあるので、ああこりゃいかんと思った。もし略さなかったら「マイクロソフトさま」とか書かれるのか。やめてくれ。コンビニの「いらっしゃいませこんにちは〜」以上に気持ち悪い。