池波正太郎「私の歳月」アマゾンレビュー

私の歳月 (講談社文庫) 「柳生一族の陰謀」(笑)星3つ - 評価者: 小谷野敦、2021/04/171979年刊行の随筆・対談集。対談相手は佐多稲子、料理関係者、中一弥、そして架空のジャン・ギャバンとのもの。あまり時代考証的な話はなく、映画も東京も昔は良かった…

三輪茂雄「粉の文化史」アマゾンレビュー

5点 1985年にNHKの市民大学で放送されたものを書籍化したものだが、著者は名古屋大学工学部を出て技術屋として会社勤務したあと同志社大学工学部教授となった粉体工学専門の人だが、それ以外の考古学や歴史、文学にも通じる大変面白い人物である。壬申の乱を…

映画「ソワレ」アマゾンレビュー

ソワレ [DVD] これはひどい星1つ - 評価者: 小谷野敦、2021/04/09開始36分でそっけなく「ソワレ」とタイトルが出るが、芸術的に見せようという意図が空回りして、そこまでどういう話なのかほとんど見えない。「童貞放浪記」の山本浩司だと気づかなかったが、…

「持ち給金」と相撲協会

今度の相撲の本に「持ち給金」のことを書いた。力士一人一人が持っていて、勝ち越し、金星などによって加算される給料のことだが、私は高校時代から、これが幕下以下に対しても支給されるのかが分からなかった。もちろん相撲の本に書いてあるが、そこが微妙…

映画「星の子」アマゾンレビュー

星の子 通常版 [DVD] そうは見えない毒親 星3つ - 評価者: 小谷野敦、2021/04/06 原作を読んだとき、主人公は最後に大人になって宗教から解放されるのだと思って読んでいたら、そうならなかったので戸惑った。おそらくこれは今村夏子の実体験で、今村の両親…

橋浦方人「蜜月」の衝撃

立松和平原作、橋浦方人監督の映画「蜜月」を、35年ぶりくらいに観た。立松が夫人と知り合って結婚するまでを描いた私小説の映画化で、佐藤浩市と中村久美が主演している。84年の映画だから、86年ころテレビで放送されたのを観たのだろうから、私は24歳で、…

小説の書き方

松岡圭祐という作家の「小説家で億を稼ごう」とかいう新潮新書を途中まで読んで、この人はどういう小説を書いて億稼いでいるのだろうと思い、処女作の『催眠』というのを読んでみたら、売れるわけは分かったが、新書に書いてあった小説の書き方のうち欠点が…

映画「空母いぶき」アマゾンレビュー

平和主義者も大変だなア・・・星2つ - 評価者: 小谷野敦、2021/04/02当初「右」方面の映画かと思って、おお佐藤浩市いつも出るなあ、と思っていたら様子がおかしい。せっかく撃墜から生還した味方を敵方捕虜がいきなり射殺しても優しく捕虜に声をかける艦長…

古藤田京子アナウンサー

私が中学生のころ、NHKに滝沢京子という美人アナウンサーがいた。高校一年になった1978年に、「少年ドラマ」シリーズが終わり、「600こちら情報部」という子供向け情報番組が始まり、鹿野幸四郎と帯淳子の二人が司会をやっていた、その番組で滝沢さんはニ…

ヴァネッサ・スプリンゴラ「同意」アマゾンレビュー

同意 (単行本) 元ネタの翻訳がない 星4つ - 評価者: 小谷野敦、2021/03/29 フランスの現在84歳のマツネフという少女との性愛をネタにしてきた作家が50歳の時14歳の著者を恋人にしていたということを本人が書いて告発したもの。当時のフランスでは文化人が少…

「ザ・中学教師」アマゾンレビュー

ザ・中学教師 [DVD] ざわざわする 星3つ - 評価者: 小谷野敦、2021/03/25 プロ教師の会の主張に基づく長塚京三の管理教育教師を中心として描いているが、長塚は生徒の父母からの贈物をあっさり受け取っており、立派な人ではない。いじめに逢っている娘も、家…

野口武彦『元禄五芒星』アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち3.0 忠臣蔵の周辺 2021年3月23日に日本でレビュー済み 「元禄六花撰」の続きで五編の小説風評論を載せる。大石主税の衆道的側面を描いた「チカラ伝説」と、大野九郎兵衛の息子を描いた「元禄不義士同盟」はなかなか面白い。だが戸田茂睡…

近松門左衛門と坂田藤十郎(2)

近松門左衛門と坂田藤十郎 - jun-jun1965の日記 ここに書いた、近松と坂田藤十郎の関係について、藤本義一が「人面瘡綺譚」という短篇を書いていた(『生きいそぎの記』講談社文庫)。藤十郎の側から、人形浄瑠璃のほうへ寝返った近松を恨む内容で、これは藤…

佐々木たづ「ロバータさあ歩きましょう」アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち2.0 お金持ちですね 2021年3月22日に日本でレビュー済み 著者は高校三年の時目の病気のため失明し、童話作家として立ち、英国で買って来た盲導犬がロバータという話で、エッセイストクラブ賞を受けている。1954年のことなので、著者の家…

新刊です

著書訂正: 12p、初代両国国技館が第二次大戦で焼け、蔵前に移ったという記述は、両国国技館は軍部に接収、戦後は米軍に接収され、日大講堂になった、と訂正 64p、控え力士が物言いをつけたのは白鵬だけ、とあるが、96年初場所の貴闘力―土佐ノ海で貴ノ浪…

大林宣彦「海辺の映画館」アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち1.0 晩節を汚す 2021年3月10日に日本でレビュー済み 美少女を裸にするのが好きだった映画監督が、晩年、世間から褒められたくて凡庸な平和主義に陥り、まんまと世間に褒められて死んだ。その集大成みたいな映画だが、なんで西郷隆盛みた…

仁科邦男「犬の伊勢参り」アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち2.0 共同幻想 2021年3月11日に日本でレビュー済み 徳川時代後期に、山形とか長州とかから犬が単独で伊勢参りをしたという共同幻想があった、ということが書かれている。しかし著者は実際に犬が伊勢参りをしたと信じているが、それは誰か…

杉本苑子「西鶴置きみやげ」

杉本苑子の短篇「西鶴置きみやげ」は、『オール読物』1968年11月号発表で、同題の短編集(月刊ペン社、1971)に入っている。西鶴の半生を「代作説」で描いたものだ。西鶴は俳諧師だが、『好色一代男』は死んだ妻の兄の寺内兵庫という架空の人物が書いたもの…

『モテないけれど生きてます』アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち1.0 単なるフェミニズムの本です 2021年2月28日に日本でレビュー済み もてない男の当事者研究とか言いつつ、非モテ論壇の発端たる私の『もてない男』を完全に無視している。よく無視できるもんだなあと呆れるが、そのかわり上野千鶴子と…

田中優子を批判する

田中優子と松岡正剛の対談第二段『江戸問答』を、嫌だけれど読んでいたら、田中が批判されたという話が出てきて、「江戸が明るい」なんて一言も言っていない、と言っていたが、これは2000年に私と対談した時も言っていた。そのあと、師匠の広末保からも批判…

競輪上人と倍々賭け

小沢昭一主演の映画「競輪上人行状記」を観たら面白かったので、寺内大吉の原作「競輪上人随聞記」を探したら単行本が入手困難だったので、「小説中央公論」の初出を入手して読んだ。映画とはだいぶ違っていたが面白かった。 中で、倍々賭けの方法が書いてあ…

信岡朝子『「快楽としての動物保護』書評「週刊朝日」

ベストセラーになった『サピエンス全史』などのユヴァル・ノア・ハラリは、動物保護にも熱心なようだ。東大准教授の村上克尚の『動物の声、他者の声: 日本戦後文学の倫理』は藝術選奨新人賞を受賞した。「種差別」などという言葉も耳にして、どうやら最近で…

大岡信編『窪田空穂随筆集』岩波文庫のアマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち2.0 入っているわけ 2021年2月17日に日本でレビュー済み なぜこれが岩波文庫にはいっているかというと、編者の大岡信の父が空穂門下の歌人で、大岡信も若いころから空穂に親炙し、結婚の仲人を頼み、長男が生まれた時には空穂が「玲(あ…

小林標「ラテン語の世界」アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち4.0 日本語についての記述で減点 2021年2月10日に日本でレビュー済み 以前この著者の「ローマ喜劇」を絶賛したことがある。こちらはより広いラテン語とラテン文化の話で、homo 斗umi が同語源だとか話は面白いのだが、最後のほうで日本…

誰も助けてはくれなかった

未だに、禁煙ファシズムは行き過ぎじゃないか、というような文章がマスコミの片隅に載ることがあるが、私はそういうのを書く気はもうない。 禁煙ファシズムとの戦いというのを15年近くやって、結局、誰も助けてはくれなかった。助けてくれたのは妻だけである…

こちとら作家貴族じゃねえ

前にも書いたが、1997年ころ「中国新聞」から書評を依頼されたことがある。文春の「女のこころとカラダ」シリーズの一で、長男がどうとか言う本だったが、実は依頼してきた記者が「中国新聞」に自分で連載したものだった。 私はそこそこ褒めた書評を書いたが…

寺尾の本名

「探偵!ナイトスクープ」の古い録画を観ていたら、小錦が佐ノ山親方として「顧問」で出ていたが、小錦が佐ノ山だったのはごく短期間で、断髪式のすぐあとだから98年6月だろう。最初のネタは天井裏に住み着いたムササビ六匹であった。 最後のネタが、宮崎県…

「おもいひでぽろぽろ」と「炉辺荘のアン」

高畑勲監督のアニメ映画「おもいひでぽろぽろ」のエンディングクレジットの最中、主人公は田舎から都会へ帰る汽車に載っているのだが、子供たちの幽霊みたいのがすいすい入ってきてヒロインを田舎へ帰す。この子供たちは、子供時代部分に出てくるヒロインの…

音楽には物語がある(25)ピンク・レディー(2)中央公論2020年12月号 

ピンク・レディーのデビュー曲「ペッパー警部」は、奇妙な曲だ。題名と内容がずれているし、日本でなんでペッパーなのか。曽根史郎の「若いお巡りさん」へのアンサーソングだともいわれるが、当時「刑事コロンボ」や「刑事コジャック」がはやっていたし、「…

前川一郎ほか「教養としての歴史問題」アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち1.0 学問を捨てたイデオロギー本 2021年2月3日に日本でレビュー済み 本書の宣伝文には、もはやファクトチェックだけではだめだ、とあった。つまり事実の検証をきちんとしたら彼らのイデオロギー側が負けてしまうということだ。皮肉にも…